認知症は治せるか
実は認知症の中には、オペで治るものがあります。何らかの疾病が原因で脳の認知機能が一時的に衰えて、アルツハイマー型認知症などと似た症状が起きている場合です。原因の疾病を取り除けば、認知症も消えてしまいます。
その代表的な例として、原因不明で脳内の脳室と呼ばれる空間に髄液がたまる「特発性正常圧水頭症」があります。髄液とは、外部の衝撃から中枢神経を守る働きを持つ無色透明な液体です。正常なら、「くも膜」と呼ばれる薄い膜の下を循環しているのですが、何らかの原因で流れが滞ると、脳室にたまって異常に広がり、脳の本体が圧迫され、身体機能に異常が起きるのです。主な症状は、歩きにくくなる、尿をもらす、物忘れの三つです。治療法は、たまった髄液を体内の別の場所に排出する細い管を留置する手術「髄液シャント術」です。脳室と腹腔、脳室と右心房、腰部くも膜下腔と腹腔をそれぞれ管で結ぶ3通りがあります。手術をする前に、腰に針を刺して少量の髄液を抜き、効果があるかどうかを確かめてから行うのが原則です。
このような治る認知症の人がどれくらいいるのか、実態はよく分かっていません。しかし、認知症を正しく判断してオペで活躍できる医師は不足していて、治るのに治らないと誤診されるケースも少なくないと考えられています。治らない場合でも、改善するための方法は認知症の種類によって違ってきますから、やはり正しい診断が大切になってくるのです。